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視覚障害のある鍼灸師の雇用を考える③

NPO法人FDAは就労困難な方に様々な業界や業種で働けるお手伝いをしています。
一環で株式会社マーチングループ(https://www.doi-hari.com/
ご支援をしており、代表土井亮介氏と当法人理事長成澤俊輔で対談を行いました。
記事をお読みいただき、興味がある方はinfo@fda.jpでご連絡ください。


 

成澤:やっぱり考えれば考えるほど、会社が受け入れることもそうですけれど、ちょっと既存の教育観とは別の、塾なのか、家庭教師なのか、自宅なのか、学校なのか、それも18歳以降なのか、手前なのか、この話の議論はどんな教育をしていくかってところになるんですねぇ。
 
 
土井:そうですね。昨日、岐阜で、知り合いのつてで紹介していただいた、岐阜の鍼灸師の先生、その方全盲の方で何十年もやっている方にちょっとお話を聞かせていただいたんですけれど、その先生がすごく良いことを言っていた。「視覚障がい者にとってこんないい仕事はない。鍼灸師の仕事があって良かった。だって、家にいたらあっちが来てくれるんだ。どこにも行かなくていいんだ。安全じゃないか。それで午前中私が10人くらいやるんだよ。午後は昼寝してるよ。仮に五千円だとすると、日給五万円、家にいて五万円なんて、もし仮に目の見えない私が、1日五万円稼ごうと思ったら、すごい大変だよ。何やれば良いか頭にも浮かばない。だけど、相手が来てくれて、お金も稼げて、昼寝もできる。こんな良いことはない」って言うんですよ。

たしかにそうだな。先生のすごいかっこいいなというところは、お子さんたち全員鍼灸師なんです。
 
 
成澤:へぇ!!それはすごいなぁ。
 
 
土井:超かっこいいじゃないですか。
 
 
成澤:なかなかなれないですよね。
 
 
土井:そうですよね。だから僕は本当はこれが理想なんです。本当に鍼灸師になって、お子さんが生まれて、「お父さんの仕事かっこいい。僕もなりたい。」ってなれるような環境、だから本当にこの先生はスター的な鍼灸師で、今でも患者さんがたくさん来る先生なんですよね。その先生は、別にむずかしいことはやってない、やることは簡単だ、とおっしゃるんです。もちろん、それは長年やってきたから言えることなんでしょうけど、決して視覚障がい者がこの仕事につくことは反対ではないし、今の現状をお伝えしたら、あぁそうなのかとすごい残念がって。本当にこんないい仕事はない。自分がどんなに助けられたかわからない。子どもたちも知らないうちに、勧めたわけでもないけど勝手になっていたって。
 
 
成澤:お子さんたちは目が見えるんですか?
 
 
土井:目が見えます。
 
 
成澤:すごいなぁ。
 
 
土井:だから逆にお灸のサポートとかは娘に頼んでいるみたいなことも言っていたので。

でも実は結構昔活躍した先生のお子さんが、晴眼者でも鍼灸師になっている方がいるんです。愛知の先生もそうだし、岡本先生もいます。
 
 
成澤:僕は視覚障がいと経営という仕事が合うなぁと思っているんです。それこそ僕はいつも自動販売機で飲み物を買うとき勘で買うんです。

左上って水・お茶、右上って炭酸だよな、右下ってお汁粉・コーンスープだよなと思って勘でピッてSuicaで買ったら、アイスクリームだったんですよ。(笑)

朝からそっかぁ、と。

目で見て、結果通りということはほぼないんですよね。

でもそれを日々受け止めるのが、僕が視覚障がい者として生きる上で、備わったことで、思い通りにいかないことだらけ、結果を全部受け止めることを日々やらなきゃいけない。これって、経営そのものだなぁと思っていて、社員も、お客様も、景気もそうですけど、いろんなシチュエーションを受け止めていかなければならない。やっぱりそれって大きいなぁと思いますし、それこそ二つ目に経営というのは、営業ができることも大事なので、目が見えないからこそ、お客さんにそんなに気を遣わないでしゃべり続けるとか、そんな独特なコミュニケーションがとれるっていうのが特徴的だなぁと思いますし、それは人の採用って意味でもそうですし、その感覚って大事にしていきたいなぁって思ったりしていて。

視覚障がいの当事者とかお母様方とこれから具体的に、来年一年のうちに一人くらいは受け入れや社員化していきたいとか、短期・中・長期の目標はどんな感じですか?

 
 
土井:今年から来年にかけて、もちろん雇用に関しては成澤さんとご相談しながらやっていくつもりですけど、理想を言えば、この前もいろいろお話しさせていただいたみたいに、いきなり一人をぽつんと雇う気は全くないですから。最低でも2人、3人、4人と、形が見えてくれば増やします。もちろん教育にもある程度時間をかけなくてはいけないので、来年早々に店舗を出しました、ということはやりませんが、年末から再来年くらいにかけて、店舗を持ちたいなと思っています。それまでは雇用しながら準備をしてという形にもっていきたいと思っています。

 
 
成澤:我々もいつもお伝えしているんですが、1業界1社、そして必ず経営者と、そして親御さんの願いを形にするっていうことが、FDA、あるいは成澤俊輔という障がい者雇用のコンサルティングの領域でのミッションで、全国色々な会社を毎日のように見させていただいて、やっぱり1業界1社というのは、いろいろな業界で障がいを持つ方が働けるということを証明していきたいし、どこの業界の人も言います。「うちの業界は独特なんで」って。「いやいやどこの業界も、独特ですよ。独特って言っているから、変わらないのよ」と話をしますし、経営者は人に必要とされて人は働いたほうがいい、そして経営者と本人と雇う・雇われるという形だけでなくて、親が安心して障害を持つ人の親は必ずなくなりますし、僕らも亡くなります。でも、会社の理念・哲学は死なないので、会社、そして理念が働く人を成長させて、大丈夫って言える親のようなな立ち回りをしていけるとよりよくなるかなといつも思っているので、そんな取り組みにしていけると嬉しいなと思いますね。

 
 
土井:そうですね。本当に、さっき言ったようにスターを育てたいというのは、視覚障害を持った親御さんたちが、「○○先生のような世界もあるんだな」と、「○○先生のようになれればいいじゃないか」と。実際自分の子どもが鍼灸師としていろんな患者さんに「先生のおかげで良くなったよ、ありがとう」と言ってもらえるような生活を送れているような感じがあれば、親も嬉しいでしょうし、変わってくるような気がするんですよね。

 
 
成澤:そうですね。今だとピアニストになるか、スポーツ選手になるか、講演家になるかみたいな生き方しかないんでね。それこそ今度土井さんに時間があれば、ご協力いただきたいのが、今度0歳の目の見えない子どものお母さん向けに講演するんです。そこまできたなと思って。それで、大丈夫だよ、って言ってあげられたら、0歳のうちから一緒に前に進むための教育をしていけばいいので。今月は、障がいを持つ幼稚園生・小学生の本人や、引きこもりたちのお母さん向けに会社見学のツアーをやるんです。まだまだ小さいですよ、子どもたち。でもそのうちから一緒に強みや好きを探していけば、早くなっていくので。やっぱりもっと早く出会っていけば、その家庭の中でもいい教育ができて、家庭と企業、そして僕らみたいな福祉と企業がつながっていくかなと思ってますんで。ぜひそんな取り組みをしていきましょう。

 
 
土井:いいですねぇ。0歳から。ワクワクするような。そうじゃないよ、っていうような。まだまだお母さん落ち込むことないよと言いたいですね。僕も3人子どもがいるんですけど、上2人は、立ち会うことができたのですが、子どもが生まれてくることはすごく素晴らしいことで、他には代えがたい感動がありますし、その子が生まれてきた理由って必ずあると思うんですよね。だから全然ネガティブに考えることはないと思いますし、障害があったからって、あきらめることは全然ないと僕も思いますし、まだまだ輝ける、こんなに成澤俊輔というすごく輝いている人がいるわけですからね。ぜひ、「いやいや私が世界1明るい鍼灸師・視覚障がい者」だと言う人が出てきてほしいですね。

 
 
成澤:「成澤俊輔どいてくれ」という感じで活躍してくれる人が増えるといいですよね(笑)。

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